仕事を増やすマネージャー

良いチーム、悪いチーム。 優秀なマネージャー、そうでないマネージャー。 軍隊の指揮官みたいにバリバリみんなを率いて先頭に立つリーダー、みんなとで協力して効率をよくするリーダー。

世の中にはさまざまなリーダーやマネージャー、そしてチームがある。 決して長いとはいえない自身の経験を省みても、人それぞれなやり方やそのときの流行りのスタイルで指揮したり、チームビルディングしたりしていた。

その中で「あ、このチーム(あるいはマネージャーやリーダー)は駄目だな」と感じることがある。 それらにはある程度共通項があってつい先日ふと思いついたことがある。

つまり彼、彼女らは仕事を増やすのが得意なのだ、と。 そして逆に優秀だと感じるチームやマネージャー、リーダーは仕事を減らすのが非常にうまいということだ。

仕事が増える、とだけ書くとそれほど悪いことではないように思える。 少なくとも会社としては暇を持て余しているよりはあくせく働いているほうが一般的に良いことだとされている。

それ自体を否定する気はないのだが仕事にも「増えてよい仕事」「増やしてはいけない仕事」があるとぼくは思っている。 彼らが増やしているのは「増やしてはいけない仕事」だということだ。

変更した箇所全てを人力で目grepする。 チェックリストの多重チェックを行う。

などなどこの手の話は枚挙に暇がないことと思う。

逆に優秀なひとたちは「出発点Aを掘り下げていくと問題Bに遭遇しこの問題が解けません」という自体に対して「出発点Aからいくと必ず問題Bに遭遇するならそもそも出発点をFやKのような別方面からアプローチすれば問題自体を回避できる」というようなアプローチで問題自体を叩き潰していることがある。 あるいは少ない労力で問題を回避できるようななにかを思いつくのだ。

優秀なひとは「クライアントがどのような目的から今回の依頼を行ってきたのか?」を事前にメンバーに共有することが多い。 逆に優秀でないばあいは点である「こういう改修や機能追加をおこなってほしい」とだけ伝えることが多い。

この差はこの地点ではあまり問題が表面化しない。 だが開発後半になってくるとこの説明の有無がプロダクトのクオリティーを左右しかねない重要な要素になってくることが多々ある。

つまり「なんのためにこの機能を実装するのか?」という大きな目的が共有されていない場合、どういった点に注意すればいいのか。 どのような改善や提案をすればいいのかがメンバーには共有されないため、全然関係のない箇所に凝ってしまったり、あるいは細心の注意を払って欲しい箇所がおざなりになってしまう。

これはメンバー個人の問題というよりは目的共有が行えなかったというチームの問題であることが多いように感じる。

一人だと1は1のままだがチームで働くと掛け算や乗算になって自分の実力の何倍も発揮することができる!というようなことを耳にしたことがあると思う。 最近ぼくはこれらの言説に大事な但し書きが抜けていると思うようになった。

「同じ大きな目的を共有しているチーム、メンバーに限る」というものだ。

メンバーが向いている方向がバラバラなときにパフォーマンスがぐんぐん上がっている!ということは寡聞にして聞いたことがない。 逆にうまく回っていると感じるチームは同じ問題や目的を共有できていると感じることがよくある。

人間のパフォーマンスというのは我々が思っているよりも高いものではないとぼくは思っている。 だからこそチームが同じ方向を向いたときというのは多段式ロケットのように誰かのつけてくれた加速の慣性に乗っかってさらに自分たちはより遠くへ、早く目的地に到達することができるのだと思う。

ところがこの多段式ロケットの向き先がそれぞれずれていればどうなるか? 考えるでもなく、打ち上げ後すぐさま空中分解。悪くすれば打ち上がることなく爆発だ。

つまり、管理を司るマネージャーやリーダーに求められる技能とはこの「大きな目的」をきちんと見定めて設定することだとぼくは考えている。 いわゆる「問題の本質を突く」というやつだ。

「メンバー全員が同じ意見になるなどほぼ不可能だ」と悪いチームやマネージャーは口にすることがある。

そもそもだがそんな必要性はない、「Not Agree, But Commitment(同意はしない、だがチームに従う)」という状況を作ればいい。 このときに勘違いしてはいけないのは頭を押さえつけるように不満を押し込むことではない、ということだ。 いやいや従うのではなく、「自分の考えとは違うがチームが出した結論を尊重する。」というニュアンスのほうが実際には近いだろうと思う。

さてこの問題に対する解決策はないのだろうか?

ぼくは以下の方針を取ることで解決できるのではないかと考えている。

  • キックオフMTGなどで大きな目的を必ず共有する仕組みを作る
  • 仕事を増やすのではなく減らすために努力する目標設定を作る
  • 都度目的にズレが生じていないか振り返りを行う

これで本当に改善するかはわからないがまず大きな目的の共有を徹底することで多少の改善はみられるのではないかと見込んでいる。

「やらなくていいことならやらない、やらなくてはいけないことなら手短に」という折木奉太郎の標語?は実に素晴らしいと改めて実感した。

やらなくていい仕事をやらなくてすむようにするのがぼくたちの本当の仕事ではないか。

……また氷菓みたくなってきた。