おうさまのみみはロバのみみ

ネット上での木の洞

リズと青い鳥

liz-bluebird.com

公開初日に観てきた。 ぼくは文才がないのでネタバレを含んでいる内容となっている。 そもそもレビュー記事を見に来て「ネタバレすんな!」とか言われても困るところではあるのだが一応注意喚起する。

このエントリにはネタバレを含む内容が書かれている。

感想としては主人公2人の関係性とその変遷、その心情にシンクロするように変わっていく周りとの関係性などが綺麗に、そして丁寧に描写されていた。 …が原作をみているせいで少し消化不良気味に感じるところがあった、作品の評価としては正直イチャモンをつけているレベルなので気にする必要はない。

映画として今作は非常によく出来ていると思う。 どうしても響け!ユーフォニアムの劇場版はダイジェストになってしまうため、そこを敢えて作中の2人にだけ焦点を当ててしっかりと描き切ったと感じている。 またこの2人の関係性を非常に丁寧に、そして綺麗に書ききったなと思ったのが映画鑑賞後にまず覚えた印象だ。

ではどういう点に消化不良を感じるのか?というとこれはハッキリしていて、原作は「波乱の第2楽章」と歌っているようにさまざまな人間模様と関係、その一端としてリズと青い鳥ひいては鎧塚みぞれと傘木希美を描いている。 映画冒頭で2人の足音がズレていたのは関係性の不安定感を演出していたのだと思う。

つまり複雑な部活内での人間関係や変遷、その結果を非常にうまく心情を語っている。リズと青い鳥はこの波乱を象徴する2人の青春と成長、そして巣立ちを描いたものではあるのだがこの2人だけだとどうにもその屈託や胸を締め付けられるような痛みまでは表現しきれない部分があり、そのへんが消化不良気味に感じた要素だ。 それは原作でどうぞ、ということなのだろうと理解はしているがやはりそれあってこその第2楽章だという思いがあったので理解はできるが感情は別という感じだ。

原作の後半のとあるシーンで鎧塚みぞれがまさしく青い鳥のような羽ばたいていくことを想像してしまうワンシーンがあるのだが映画では(本編側のネタバレになるからだと思うが)その象徴的なシーンがカットされていた。 希美という存在からのみぞれが巣立つという印象的なシーンだったこともあり、とても素敵で好きなシーンなのだがカットされていて悲しかった…。 そこまで書いてしまうのはこの映画の構成では蛇足だと思うので納得感はあるのだが、どうしても原作厨なぼくとしてはあのシーンを入れてほしかったなと言う点で残念さを覚えた。

(詳しいことが知りたい人は原作読んでね!)

とはいえ、原作どおりに作るのがよいか?というとそれは違うとも思っていて、この場合は原作が非常によく出来ていてその印象に引っ張られてしまっているだけだと認識している。 映画単体でみても非常によくまとまっており、焦点を絞って切り出しただけにそれまでいまいちなにを考えているのかわからない2人のキャラクターが初めて受肉されたと感じた。

実のところぼくはこの映画の主人公であるところの2人、鎧塚みぞれと傘木希美のことがあまり好きではなかった。 特に「北宇治高校のいちばん熱い夏」の鎧塚みぞれが登場するシーンはごっそりなくてもよいのでは?と考えていたし、全体として非常によくまとまった話しの流れにあってその部分だけ文章の流れに淀みを感じていた。

ところがこの「波乱の第2楽章」によっていともたやすくその印象は覆ってしまった。 まさしく波乱というサブタイトルに相応しい内容だ。 嫌いなキャラクターが話しが進むと一変するというのは稀にあるのだが今作ほど綺麗に反転した例をぼくは知らない。 好感を抱いていたキャラが反転するのはままある、悪感情を植え付けるのは割りと単純だと思うがその逆は非常に難しいのではないだろうか?

そういう意味では本作は鑑賞後に綺麗な反転による爽快感を味わうことができると言える。 とはいえ、原作における名シーンがちらっとだけでも表現されることを期待していた節があるぼくとしては最後のほうが少々物足りないと感じた。 特にウザりぼん先輩こと吉川優子の男気あふれる名シーンが丸々カットされていたのは理由はわかるが残念だなと感じたので是非とも映像で拝見したいところだ。

今作は言わばスピンオフ的作品となっている、完全なスピンオフとも本編とも言い難いので勝手ながらリファイン作品と呼んでいるのだがその中で感心したこととして 本編の主人公である4人のキャラクターをあまり全面に出さなかったことがあげられる。

割りとありがちなのだが前作で人気のキャラクターを全面に出してしまうとどうしてもノイズになってしまいがちでその辺の匙加減が今作は絶妙だったなと感心しながら鑑賞していた。 とはいえ作品の性質上まったく出さないというのも逆に不自然なのだがそれをうまくモブ扱いしていたのが印象に残っている、いないわけではないがきちんと脇役に徹していると感じた点が好印象だった。

あと好印象だったキャラクターとして剣崎梨々花があげられる、原作でも登場するのだがみぞれとの対比がうまく描かれていたように思う。 結果を知っているのに思わず胸中で応援したくなる愛らしさがあり、うまく表現するなーと感心した。

作品そのものではないがHomecomingsというグループの曲も良かった。 当初情報が公開されたときは微妙にマッチしてないかも?と思っていたが劇場で実際に観たあとではうまく作品に溶け込んでいるなと感じた。 なんとなく2人の関係性のような儚さを観終えたあとで感じたのでリリースされたら買ってみようと考えている。

レビューというよりただの雑記になってしまったがこの映画は良い作品だった、アニメーションとして綺麗に心情とその変遷を描いた作品だ。 ユーフォニアム作品はいろいろと心の琴線を鷲掴みにする作品だと思っているのだがその中でも最も琴線を鷲掴みにしてきた作品を大胆に構成を変えて表現しており、続きが気になると思わせてくれた。

とはいえ主人公2人の経緯がわからない人にとっては置いて行かれてしまう感覚が残ると思う。 なので万人向けとは言い難いので知らないひとにはなかなかオススメしにくい。 あくまでもファン向けの作品かな?と思わせる。

ユーフォニアムは非常に豊かな心情表現が書かれており、それが作品の魅力なのだがそこからとある人物たちを抜き出してフォーカスした作品を作るとこうなるのかと感嘆した。 ユーフォニアム好きなひとにとっては普段とは違った切り口での表現を楽しめるのではないだろうか?

ところで劇場でみていて少し苛立ったことがあった。 横の席のかたがバーガーをガサガサゴソゴソと盛大に音を立てて食べていたのだ、時間が15時前の上演開始だったので遅めのランチを食べているのだろうと思って我慢していた。 そして、ようやく食べ終わったか…と思いきや2つ目を取り出して飲み物をズゾゾーと吸い出したときには「こいつ帰ってくれねえかな…」と本気で考えた。 とはいえ、食べている人に罪はないので自分がされて嫌なことは行わないようにしようと自戒するにとどめたいと思う。

映画好きな友人が映画館で上映中に飲食するやつに殺意がわくと以前いっていたときにはそんなもんかーと軽く受け流していたが映画を集中して観たいと思っているときにされると確かに殺意がわくなと改めて友人の思いに共感したし、以前読んだ増田で「映画館で飲食するやつに憤るやつ、そんなに嫌なら円盤買って自宅でみろ」という主張も正しいなと思った。 アクション映画とかなら気にならないんだけど…音楽が題材だったりするような作品ではやめてほしいなーというのが正直なところだ。