コンピュータが小説を書く日 ――AI作家に「賞」は取れるか

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コンピュータが小説を書く日 ――AI作家に「賞」は取れるか

読書の目的

評価

👍

書評(まとめ)

昨今話題になったalphaGoや最近よくWebエンジニア界隈でも話題にあがるディープラーニングなどの話しを聞くにつれ「人工知能、深層学習というものは次世代の技術なのだろう」そんな万能感に似た感情を抱いていたのだがこの書籍を読んだあとでは180度反転してしまった。

そもそもぼくが星新一賞を一次選考を通過したことを知ったのは #rebuildfm のとある回でhiroshimaさんが語っていたことに起因する。 ちょうどそのタイミングでAlphaGoがイ・セドルに勝ったと話題になったタイミングであり、またこのことがこの書籍にも書かれているのが実に趣深い。

この本は如何にして小説をプログラミングで作り出すか?ということに対する苦心の数々であり、当初読むまでのAIや人工知能という幻想に対する深掘りはなされていない。

そういうことを期待している人には頼りない内容に感じるかもしれない。 だが、そういった幻想を抱いているぼくのようなミーハーな人にはものすごくヒットするのではないかと思う (どうも読んでいるとそのような人をターゲットにしているように思える)

小説とは、文章とは、文とは…いやいやそもそも語とはなんぞや?といったまるで小説家のなり方が丁寧に書かれているかのように感じた。

書籍の中で気になる言葉はいくつもあったがその中でも最も感銘を受けたのが

Page 198
私は創造性は単に「結果」を評価する言葉だと思っています。つまりいいものが作れたならば「創造性があった。発揮された」と後付けで言っているだけだと考えています。

この段階では「ああ研究者らしい考えだな、一理はあるかもしれないが多分多くの人には受け入れられない考えだろうな」と余裕を持って読んでいたのですがその後に語られたことに衝撃を受けることとなった。

(中略)もし、この解釈が正しいとすればコンピュータが素晴らしい作品を作れば、多くの人々にコンピュータが「創造性」を発揮したとみなすのではないかと思います。

もし、この著者である佐藤理史氏の言うとおりこのような解釈が正しいのであれば、今現在「創造性」の特権階級である人類の領域にコンピュータが進出してくるということになります。 どうですか、ドキドキワクワクしませんか? ぼくはしました!そんあ未来が生きている間に見れるかもしれない、まるでSFの世界じゃあないか!!!、と。

書籍の大半は人間が見て不自然さを感じないレベルの文章を組み立てるための奮闘が書かれていますが後半になるとAIが書いた小説が選考を通過し、その内容を公表したあとのあれこれが書かれています。 ちょうど某大手Web企業が叩かれている著作権にまつわる内容やマスメディア介する情報の伝言ゲーム具合などなど実際に経験された方ならではの情報などが書かれていたのは失礼ながら面白く読ませてもらいました。

なんか人工知能ってのがすごいらしいぞ!程度の認識のぼくのような人に読んでもらいたい書籍でした。 内容も200ページちょっとなので3時間ほど、速い人なら2時間かからずに読めるのではないかと思います。 通勤電車のオトモにボリューム的にいいんじゃないかなと思います。