大阪市プログラミング教育推進プロジェクトの事業者選定に対する問題について

最初に

めっちゃ長い割にクソの役にも立たない内容でございますことを事前にご理解ください。

発端1:

大阪市:平成29年度小学校段階からのプログラミング教育の推進に当たり協力事業者を募集します。 (…>教育委員会事務局>入札・契約のお知らせ)

発端2:

最低限こちらのまとめが参照されている前提でお話します。

togetter.com

ぼくの前提

  • プログラミング教育自体はやったほうがいいと考えてる。
    • ただプログラミングを全体として教える必要はない
  • ネットの内容が必ずしも正しいとは限らない(と思ってる、真偽不明だしね。)
  • 学校側のリソースが厳しいというのは理解できる
    • 金銭的な面でも学習環境的な面でも。
  • 今後プログラミング教育は勃興の時代に突入すると思ってる

目次:

  1. 授業づくりへの協力、教材・ソフトの提供、教員への研修が教える側の持ち出しである点
    • 民間事業者のみが一方的に負担をしているようにしか見えない
    • 教材や人材育成、ソフトの提供や交通費まで自費負担なのでボランティア活動よりなお悪い状態
  2. 募集要項の内容からはネットのようには読み解くことが出来る部分がない。
    • 募集要項などをみる限りにおいてネットで聞き取ったとされる内容との乖離が激しい。
    • 大阪市プログラミング教育推進事業協力事業者募集要項の内容を遵守すること」とあること。
  3. 議員、ないしは教育委員会が専門家に聞き取り調査をするのが先ではないのか?

    • その上で各モデル校への打診や検討をすべきではないか
  4. 1人の市議会議員の発言では信頼できない、もし本当にそういう意図であるなら公式発表があるのではないか?

  5. 先行的な共同開発であれば民間業者のメリットはどこにあるのだろうか?
  6. 目的が論理的思考を養うためであるならプログラミングである必要性がない
  7. 教職員よりも優れた生徒が出てくる可能性とその対応
  8. 授業の課題やテスト形式についての素朴な疑問

疑問点:

1. 授業づくりへの協力、教材・ソフトの提供、教員への研修が教える側の自費負担である点

授業づくりへの協力や教材・ソフトの提供、教員の研修等を、無償で実施できる民間事業者を募集

これ、普通に考えればあり得ない状況だと思うのですよね。 例えば「英語のスピーキングに力をいれるから無償で教員への研修をしてそのための協力や教材などの費用は自費でお願いしますね」と言ってるのと同義だと思うわけです。 英会話教室ってだいたい月1万円とかかかるわけですよね、それも少人数制とかで。 それが少人数制の何倍もの子供の教育をして、その教育をする教師のサポートと研修を行い、授業で使うであろうソフトや教材を作る、まして交通費すら自費負担…。

ぼくは教育分野に詳しいわけではないけれどこれらを準備するだけでも何十万円という金額が必要だろうということはわかります。 実際的にはもっとかかるでしょう、人件費や光熱費なども含むわけですから。 仮に利益を度外視してもそうなるだろうと思います。

PHP 研修」で検索し簡単に調べたところ、プログラミング教室でおよそ10時間〜20時間の学習時間で費用が1人あたりだいたい10万円〜20万円ほどかかるようでした。 より質の高い講習などではもっと高額なのかもしれません。PHPではなくC#であるとか、MySQLでなくOracleであるとかiOS/Android開発手法であるとかとか。 それらを全て業者の持ち出しでまかなえというのはさすがに酷すぎるように思います。

2. 募集要項の内容からはネットのようには読み解くことが出来る部分がない。

問題のサイト下部にある応募様式に誓約書の下記のような文言があります。

  1. 大阪市プログラミング教育推進事業協力事業者募集要項の内容を遵守すること。

この募集要項ですがそこには上記のような事業者負担に関しても書かれているわけです。 そしてこれが書かれているのは誓約書の項目なのです。

ネットの内容が真であるとするならば本来の目的と相違した悪意的に言ってしまうならば偽の誓約書に契約をさせるということになってしまいます。 もし本当にパートナー募集であるならばこの内容はおかしいことになります。 万が一、なにかトラブルがあり裁判沙汰になったときこの誓約書を縦に泣き寝入りを強いられるような事態に発展しないといい切れるでしょうか? ぼくには恐ろしくてこの誓約書にはサインできそうもありません。

この点からぼくはネットで聞き取ったとされる内容に対し非常に懐疑的にならざるを得ないと考えています。

この市議会議員さんが嘘をついているとかいうわけではありませんが 大阪市の言っていることとやっていることに大きな隔たりがあったことは否定できない事実でないかと思います。 この件はマスメディアや市議会議員さんが追求してくれるものだと信じています。

3.議員、ないしは教育委員会が専門家に聞き取り調査をするのが先ではないのか?

これをみてまず最初に思ったのが「仮にこの募集に1つも手が挙がってこなかった場合は見直しの必要があるとも考えている」という項目です。 これって大阪市は「今回の募集を行いましたがどの業者も手を挙げなかったので見直した結果プログラミング教育はやめまーす!」という流れに持っていきたいのかな? ……というように勘ぐれるなと思ったのが率直な感想です。 (なお、この方は大阪市のほうに聞き取りをしてくださっただけでそういった趣旨で公募を推進されたわけではありません。この発言だけを切り抜くとそう見えかねなかったため補足させてもらいます。)

前回応募したときに誰も応募しなかった実績を作るための公募なのか、やらないための理由づくりをしているように感じています。 少なくとも好意的に受け取ることがぼくには出来ませんでした。 もしかしたらそういう意図が潜んでいるのかもしれない、そんな下衆の勘繰りであることを願います。

4. 1人の市議会議員の発言では信頼できない、もし本当にそういう意図であるなら公式発表があるのではないか?

今のところ、大阪市からはこの内容に関して特にアナウンスがされているようには思えません。 件のページも変更されたようには見えませんし…。 この市議会議員さんが信頼できないということではなく公式発表がない、Twitterのようなサービスに全幅の信頼を置くことは難しいという単純な話です。 後日なんらかのアナウンスがあることを期待します。

少なくともぼくには真偽を判断することはできそうにありませんのでマスメディア、市議会議員さんにおまかせしたいと思います。

5. 先行的な共同開発であれば民間業者のメリットはどこにあるのだろうか?

これ、個人的にはかなり大きく引っかかった点なのですが、 仮に事業者同士であれば確かに自分たちだけ負担して共同開発することなどはあると思います。 ですがそれはあくまで事業者側にメリットがあるからです、ボランティアでは決してないと考えています。

この例でいうならば先行研究したことによる試行錯誤などの知識、経験というメリットがあります。 また先行して行ったことによる宣伝効果やそれに興味を示した人材に対するアピールや求人募集などへの効果も見込めるかもしれません。 それが費用対効果として適切であるかどうかは甚だわかりませんが。

ですが今回の公募の場合はどうでしょうか? 少なくとも事業者側が得するところというのはないように思います。 仮に教科書選定に携わったとして教科書の購入に関して、 特定の事業者の実績によるバイアスがかかってしまうことは公平性が求められる公の組織としては明らかにそぐわない内容になっていると考えます。 今回はモデルケースであるだろうことを考えると例外的にOKなのかもしれませんが個人的にはあまりよろしくないように思えます。

6. 目的が論理的思考を養うためであるならプログラミングである必要性がない

ぼくはプログラミング教育を行うことは非常に有益だと考えています。 ですがそれを差し引いてもこの目的のためであるならばプログラムである必要性はないと思います。 ロジカルシンキングの教科書でも作って、ディスカッション形式で議論をさせながら学ばせるなりなんなり 別のアプローチのほうがよほど速いしコストもかからないんじゃないかと思います。 幸い巷にはロジカルシンキングを身につける方法が書かれた書籍が出ていますし、そういったセミナーも日々開催されているようですしね。 本当にそんなことで身に付くのかどうかはぼくは懐疑的ではありますが。

上記のハードウェアやソフトウェアの指定を行政がすべきでないという点には賛同です。 ソフトウェアの進化は非常に早く、それによってご飯を食べているぼくのような末端エンジニアですら日々情報を追い続けていないといけないような状態です。 それを本来違う専門分野を担当している教員に負担させるというのは中々難しい状況だろうと思います。 また、そのためにまた研修を設けるとただでさえ昨今やれ部活動だ、修学旅行の引率だと多忙な教員に更なる負荷をかけかねないと思います。 負担に関しては対象者である学生にも大いにかかってくるかとは思いますが。

7. 教職員よりも優れた生徒が出てくる可能性とその対応

6でも紹介しましたが生徒にやる気さえあればブラウザでも勉強できる環境が今現在あるわけです。 そのような状況ですと思考にフィルターがかかってしまい柔軟な発想がしにくくなっている大人よりも子供のほうが吸収率が高くなる可能性があります。 そんなときに教員ではわからない問題解決方法に対して、子供が解答してしまう、出来てしまうという可能性が出てくるのではないかと思います。

そのようなときにどう対応するのか? 多くのオンライン系の学習サイトと同じように本来出力されているべき内容と一致しさえすればOKなのか。 それともインターネットでよく話題になるように学校ではまだ習っていない教えていないから間違いとして扱うのか。 また大人顔負けの知識を先行して手に入れてしまった生徒が出てきた場合にどう対応するのでしょうか?

などなど環境が整いすぎているからこそ起こり得る問題のケアを考えなくてはいけません。 まさかそこまで外部委託である民間業者には頼らないだろうとは思いますがこの辺どのように考えているのかが気になります。 今まさにそのことを協議するために公募をしているのでしょうけども。

8. 授業の課題やテスト形式についての素朴な疑問

課題の提出やテストはどうやるんでしょうか?まさか紙のテストにコードを書かせるつもりなのでしょうか。 ITパスポートなどに代表される資格の試験と同じようなテスト方法になるのでしょうか? (だとすると業者や教員のかたの労苦は計り知れないものになってしまう気がしますが…)

それともテストのときにPCがある部屋に移動し、1クラスづつテストを受けさせるのでしょうか。 この辺は単純に疑問ですね。 テストなし提出課題のみで判断する…みたいな形になるのかどうか。 それにしてもその場合、提出作品に対する点数の付け方はどうするのでしょうか?

番外 学校のPC環境について

ネットの反応をみているとPCスペックが低いことに対してこんなマシンでまともに開発できるわけがないといった旨を発言されている方を見かけました。 これに関しては一理あると思います。 確かにコンパイルが必要なプログラミング言語やUnityやXcodeのようなIDEを快適に動かすようなマシンだとはとても思えません。 ですが、ぼく自身としてはPCスペックに対する批判的な内容は的はずれであると考えています。

今はブラウザがあれば十分にプログラミング言語を学ぶことが出来る環境があります。 オンラインであればドットインストールなどが日本だと有名ですし、オフラインであってもコワーキングスペースで有志によるハンズオンなども無料で開催されていたりします。 paiza.ioやideone.comのようにブラウザ上でエディタやコンパイルが実行可能な環境も整っているわけです。 これらであれば環境を整える必要性も非常に少なく実行可能でしょう、学校側のPCでインターネット環境に接続可能なのかどうかは不明ですが。 それにまあ今の御時世、

さいご

以上となります。 正直書かないほうがいいのかなとは思ったのですがプログラミング教育は提唱当時からなにをどうやって教えるのか?が問題視されていましたが 危険視している内容そのものな公募がなされてしまったために過剰かとは思いましたが書くだけ書いてみようと思い筆を執りました。

基本的にツッコミどころがありすぎる公募に対する内容に対しての不安感が主になっています。 プログラミング教育はこれから過熱していくだろうと思っていますし、そういう選択肢が増えることは非常に良いことだと思っています。

ただ一方で昨今のプログラミング教育に関する問題というものは以前あるわけで 先行しているアメリカなどでもスクールに通っていればそれでOK!これで職に困ることはない!みたいな夢物語は当然存在しませんし 今現在ただのコーダーで甘んじているような人たちは将来的に機械に今の仕事を取って代わられるだろうとぼくは予想しています。

きっとあと何年かしたらプログラミングなんて出来て当たり前でしょ?みたいな世代が幅を利かせるのだろうと思います。 そんな未来が恐ろしくもあり、頼もしくもあると感じているので諸問題があるかとは思いますが このプログラミング教育は成功してほしいですね。 だからこそ、将来の彼、彼女らを苦しめる遠因になりかねない今回の公募に関しては見直してもらいたいと強く思います。

意図と目的を明確にしてくれさえすればきっと無償であっても協力したいという企業さんや業者さんは出てくるのではないかと思います。

正直感情的になっていない…とは言い切れないだろうと思うので不適切である、指摘や疑問点が頓珍漢である もしくは意図せず他者を攻撃する内容になってしまっているなどの場合は訂正、最悪削除するつもりです。