舟を編む

舟を編む (光文社文庫)

舟を編む (光文社文庫)

アニメから入ったにわかだが非常に良かった。 個人的には天地明察(ぼくの中ではかなり上位に位置する小説)と同じくらい楽しめた。 読了感が寂寞とした気持ちと清々しい春の陽気のように沸き立つ気持ちが撹拌されている、そんな気持ちにさせてくれる作品だった。

大きな流れはアニメと大差がなかったが緻密な心理描写であったり、情景の表現のされかたなどはやはり小説特有の良さというべきものに溢れており、原作厨のぼくとしては大変楽しめた作品だった。 アニメを見終わるまで小説を読むのを我慢していたわけだがその甲斐は十分にあったと思う。 最初はアニメと小説の些末な表現の違いや差異に気を取られることもあったが中盤にかけて怒涛の勢いで読了した。

元々の入りはアニメの舟を編むだったわけだがそれ以前から書籍名だけは本屋などで見かけることが多々あったため知っていた。 そのときは「江戸時代(もしくは明治初期)を舞台にした恋愛小説家なにかだろう」と考えていた。

舟という漢字から時代を感じ、編むという言葉から女性らしい柔らかさを想起したので勝手にそう思い込んでいた。 だからこそ書店でも手に取らずにいた(恋愛小説や恋愛漫画が苦手なのだ)のだがこれは大いなる過ちであった。 後悔している。

どうやら本作は映画化もされているようだ。 ボク自身は見ていないがこの内容は確かに実写化しやすかろうと思う。 あとは役者の演技次第と演出の仕方次第なのだろうけどもテ○フォーマーズや進○の巨人みたいなことにはならんだろうと思う。 比較的実写とは相性が良い作品だと思う。

普段本を読まない人に作品の面白さを伝えても多くの場合途中で読むことをやめてしまうか、最初から諦めてしまうケースが多い。 そういう意味ではアニメと実写映画化されているというのは非常にオススメしやすいように思う。

辞書を編纂するという恐らく世の中にある仕事の中でも日の目を見ることがほとんどない地味な仕事を こうまで熱量あふれる作品に仕立て上げてしまう三浦しをんという作家の素晴らしき表現力には脱帽しきりだった。

もしぼくが子を持つ親であったならば子供に是非とも読んで欲しい、そういう気持ちにさせてくれる一冊だった。 非常に堪能させていただきました。