エンジニアリング組織論への招待 ?不確実性に向き合う思考と組織のリファクタリング
- 作者: 広木大地
- 出版社/メーカー: 技術評論社
- 発売日: 2018/02/22
- メディア: Kindle版
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さまざまな会社を転職してきて思うことの1つに「良いチームや良い組織とはなんだろう?」というのがある。
TeamGeekを読んで良いチームには必ずHRTがあることに気づけたし、Elastic Leadershipを読んで良いリーダーは自分がどうやれば成長できるのか苦心してくれていたなという気付きも得ることができた。
Team Geek ―Googleのギークたちはいかにしてチームを作るのか
- 作者: Brian W. Fitzpatrick,Ben Collins-Sussman,及川卓也,角征典
- 出版社/メーカー: オライリージャパン
- 発売日: 2013/07/20
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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- 作者: Roy Osherove,島田浩二
- 出版社/メーカー: オライリージャパン
- 発売日: 2017/05/13
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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なのだけども、ではどうすればよい組織やチームになるのか?という疑問にはなかなか明確に答えがこれだ!と言えるものを実感できていなかった。 TeamGeekやElastic Leadershipは良いチーム、あるいは組織という下地があった上でのストーリーなのかなと感じる部分があって、いわゆる「イケてないチームや組織をどう改善していくのか?」に対する明確な答えという点では力が不足しているように感じていた。
カイゼンジャーニーなども読んだがなんというか理想論仕立てな面があって、うーん?と思ってしまう面があった。
カイゼン・ジャーニー たった1人からはじめて、「越境」するチームをつくるまで
- 作者: 市谷聡啓,新井剛
- 出版社/メーカー: 翔泳社
- 発売日: 2018/02/07
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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実際にカイゼンできる面もあるんだろうけどもそうではなくプロジェクトやプロダクトレベルではなく、組織そのものが抱えている問題に対してどう解決をはかるのか?がいまいち不鮮明な状態で頭にもやがかかってしまっていた。
それはどうしてそうなるのか?という背景やそのためのロジック面において納得がいっていなかったからなのだろうと今にして思う。 もちろんそれらの書籍にも改善するための方法が書かれていたのだけどそれは方法、つまり「How to(どうやるのか)」であって「What to(何故やるべきか)」が腹落ちせず、消化不良を起こしていたのだろうと思う。
これらの書籍を読んだ当初はこれらの内容に関しては自分のマネジメントや前提となる知識に甚だしい知識の不足があるのだろうと思っていたのだけどもこの「エンジニアリング組織論への招待」を読んだことで一応の解答を得られたかなという気がしている。
とはいえ、こういう要因があるということがわかっただけで実践するためには必要になるものがまだまだ足りているわけではない。
この書籍、非常に興味深く読めた。 その割りにはサラサラと読め進められていたので読書スピードの早い人は1日で読み切れるのではないだろうかと思う。
この本は各章ごとにテーマがあり、1章は個人、2章が1on1(メンター&メンティー)、3章がアジャイル、4章がチーム、5章が組織という構成になっている。
各項目で重複する内容があるのだがそれぞれの立場やテーマが違うのでここで同じことを言ってる背景にはこういうものがあるよという強調になっているので割と中だるみせずに一気に読み切れた。
(あとで知ったがAmazonのレビューで繰り返し同じことが書かれていた点を冗長と表現されていたがこのあたりは強調と取るか冗長と取るか判断がわかれると思う。)
また今いる会社がエンジニアが足りないねという話しを以前からしており、自分にもこれらの役割を求められていると感じていたなかで読めたということもあって非常にタイミングが良かったように思う。
今まで少人数のベンチャー会社にジョインしたことはあったけどもそれは2か3→10にしていくぞ!という感じで1→2や3へのフェイズではなかった。 なのでいざ自分がそういう立場になったときに「やったことがないので何をどうすればいいのかわからない」というまさしく不確実性に起因する不安がそこはかとなく心の内側にわだかまっていた。
一応そういう話は月に1度、CTOか外部の技術コンサルタントのかたと1on1を行って話していたのだけど解消とまでは行かず、またどうしても普段の仕事のほうにフォーカスがいきがちだったなと読了後に感じた。
本来はそこを解決したかったのかもしれない、コーチングって難しいなと改めて感じた。
また外部の技術コンサルタントのかたが1on1のときに「PCを開いてパチパチやってるけどこれは1on1で気づいたこと、気になったことなどをメモするのが目的だから話しに集中してないわけじゃないよ」と言っていて「いやそれはわかるけどいちいちそんなことを相手に伝えるなんて律儀だなー」と思っていたがそれが間違いであったことに気づいたりと日々の仕事で何気なくしていることにもどういう背景があるのか、どういうことを気にかけてくれているのか?ということがわかったという点だけでも読んだ価値があったかなと思っている。
個人的な感想としては1章、2章が一番知りたいところであり、一番時間をかけて読んだ箇所でもあった。 だけど3章のアジャイルに関しては正直いまのチームでやれていることが多くあり、「今のチームの進め方で間違っていなかったな」という自信を補強はしてくれたがあまりクリーンヒットを繰り出すようなものではなかったのでさらっと一読だけしてさっさと次に進んでしまった。
もし前職のシーズで働いているときに読んでいたらまた違った印象を受けたかもしれない。
第4章と第5章に関しても、まだ実際にそういう立場になっていないからかいまいちピンとこないように感じた。 ここの話し、例えば「4-2 スケジュール予測と不確実性」や「5-3 技術的負債の正体」に関しては面白く読めたのだけど他の項目はさらりと流してしまった。
ぼくが先頭にたってチームを引っ張っていくような立場になったときに読んだらまた印象が変わりそうだなと感じたけども今の時点では一通り目は通しただけで終わってしまっている。
Kindle版で買っているのでまた必要になったときに引っ張り出して読めばいいかな。
似た本としてティール組織という本があり、そちらは購入はしたがまだ未読なのでこちらも合わせて読むといろいろな組織における知識の補強がされそうな気がする。
- 作者: フレデリック・ラルー,嘉村賢州,鈴木立哉
- 出版社/メーカー: 英治出版
- 発売日: 2018/01/24
- メディア: 単行本
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個人的にはオススメな本なんだけども一方で誰にでも進められるかというと気がかりな箇所もある。
ぼくは良いチームも悪いチームも良い組織も悪い組織も体験してきたので非常にどの項目もそのときの記憶から書かれた内容がイメージできたのだけどこれは今までの体験があったからイメージできたのかな?と感じる点があった。
そういう意味でいうならばこれは新卒で会社に入って2〜3年目くらいに読むのが最高のタイミングでそれ以前に読んでもバズワードの説明書以上の価値を見出すのはもしかしたら難しいのかもしれない。
Amazonのレビューをみていると実際にどうなのかはともかく実践するには難しいのではないか?といったレビューやなんだかよくわからないというコメントがあった。 今現在素晴らしいチームに所属している人には刺さりにくかったり、あるいはその真逆でいま飛んでもなく酷いチームで働いていてそれが普通だと思いこんでしまっている人には不可能な理論を展開されてしまっているように感じるんじゃないかなという気がした。
Elastic Leadershipのことをぼくは良書だと思っているんだけどその良書の下地にこのエンジニアリング組織論への招待があるのかなと読んでいて思った。 なのでElastic Leadership読んでからエンジニアリング組織論への招待を読むと納得感がますかもしれない。
またElastic Leadershipを良書だと感じた人ならこの書籍を興味深く読み進められるだろうと思うのでオススメです。